アール・ヌーヴォーとは
アール・ヌーヴォーとは
19世紀末から20世紀初頭、95年から05年まで約10年間続き、スタイルは曲線パターンで織りなす自然主義的な表現です。 名称はサミュエル・ビングがパリで開いたギャラリーの名から来ている。 ビングの店は時代の縮図で、トゥールーズ・ローレックのポスター、米国ルイス・サリヴァン、ルイス・C・ティファニーのアート・グラス、ルネ・ラリックの宝石細工、英国チャールズ・ヴォイジー、ウォルター・クレインの壁紙や布地などが展示、また店の装飾はアーツアンドクラフツ運動から影響を受けていたアンリ・ヴァン・ド・ヴェルドが手掛けた。 名前の由来からも分かるとおり、アール・ヌーヴォーはその時代に各地で起こった近代化に対する芸術、工芸の反応として起こった新しい(ヌーヴォー)芸術(アール)を模索する運動でした。
イギリスではアーツアンドクラフツ運動が引き続き起こっおり、影響を受けた各地で運動が広がりを見せていました。スコットランドのグラスゴーではチャールズ・レニー・マッキントッシュのグラスゴー派が、ベルギーのブリッセルではヴィクトール・オルタなどの『20人組』、改組された後の『自由美学』。ベルギーからも影響を受けたドイツのユーゲントシュティル。オーストリアの分離派。イタリアではロンドンのデパート名から名づけられたスティレ・リデルティ(リバティ・スタイル)。アメリカではルイス・サリヴァンなどのシカゴ派など各地で動きが見られました。 様式は中世、ルネサンスから近代にいたる各様式を超越して、自然との親和における、純粋で陶酔的なリズムを醸し出す曲線パターンに本領が有り、例えばエクトル・ギマールデザインのパリ地下鉄(メトロ)の出入口、エミール・ガレのガラス器に代表とされる植物的造形やアルフォンス・ミュシャなどのポスターに見られる女性の髪を彷彿とさせる曲線が有ります。 表面的にはこの様な植物など自然を表したものは工業時代に対する懐古的なものに見えそうですが、そこにある思想は西洋思想の深遠で有るアリストテレス、プラトン、そこから影響を受けているキリスト神学の根底にある自然を含めた神が生み出すものには理由が有り、物は合理的に出来ていると言う考え方から見れば、近代を見つめなおすためにも自然に宿っている合理性を追求することは懐古的よりむしろ現代的でした。 大きな時代の転換点で苦悩していた同時代人にとって、自然観を見つめ直し、自然界に内包する合理的な物、機能的な物を発見、そして表現する事は、彼らが生きた時代に対応するために必須な作業だったと言えるでしょう。 |
||||